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【001706】 北斗星1号乗車記
2003/12/14(日)23:20 - くろしお ()

11月22日に北斗星に初乗車しました。

乗車まで

三連休を利用して北海道旅行することが急遽決定!どうせなら以前から気になる存在だった北斗星で行こうという話になりました。どうせ行くなら、鉄道ジャーナル別冊「走れぼくらのブルートレイン」で特集されていたロイヤルで行きたい!しかし、出発まで一ヶ月を切ってからの計画だったので、当然一ヶ月前10時打ちは出来ず、一室だけ空いていた1号のツインDXをとりあえず確保し、ロイヤルのキャンセルが出るのを狙い続けました。そして出発2日前になり、みどりの窓口で確認したところ、1号のロイヤルが一室空いているとのこと。差額20円を払い、めでたく直前でロイヤル乗車が決定しました。

 旅行で気になる事柄のひとつに天気があります。天気予報は週末に冬将軍が北日本を訪れ、大荒れの天気になることを報じています。北日本はまさに北斗星が向かう先。当日は運行されるのか不安が募ります。出発当日まで天気予報とにらめっこの日々。

当日

グランシャリオでのディナーは予算の関係で予約しなかったため、夕飯は東京駅大丸地下の弁当売り場にてあれこれ購入。あと、乾杯のお酒はどうしようか・・・そうそう、ウェルカムドリンクがあるし!

いよいよ上野駅へ!16時位に五つ星広場へ到着したのですが、すでに北斗星1号に乗車する旅客で待合席は8割方埋まっていました。幸い荒天による運行中止等のアナウンスも無く一安心。彼女と旅立ちの高揚感を楽しみながら、しばし1号の入線を待ちます。この日は上野発のカシオペア号の運転が無い日。今夜は北斗星1号が豪華寝台特急のトップバッターです。そして、多くの旅客が注目する中、北斗星1号はほぼ定刻に上野駅13番線ホームへ推進運転でゆっくり堂々と入線しました。

早速、札幌までの旅を楽しませてくれる1号の編成全体を見て歩きます。本日、長編製を青森まで引っ張る牽引機はEF-8198号機。直交流の釜を間近で見るのは初めてだったので、感動でした。多くの乗客が先頭に集まり、今夜我々を北の大地へと導いてくれる赤いヒーローを撮影していました。さて、今夜我々が泊まる客車はオロハネ25 553。ロイヤル・デュエットの文字も誇らしげです。上野ではホームと面するのは客車の通路側のため、13番線からは様々なバリエーションの窓を眺めて楽しむ事はできませんが、通路側は大きな窓のため、乗客が一晩の我が家へと入って行く様子が良く見えます。開放B寝台の車両では、家族連れが楽しそうに自分達の空間をつくる様子が。さて、10号車ロイヤルの木目調の扉が大きな窓越しに主人が訪れるのを待っています。そろそろ乗車するかな。我々がロイヤルに落ち着いて間もなく、北斗星1号は上野駅13番線を発車しました。

 16時50分、夏場であればまだまだ日が高く夕方という雰囲気ですが、冬至も間近なこの時期、上野出発後ほどなく外の景色が見えましたが、個室側に広がる空にはすでに闇が訪れていました。廊下側の窓の外に見える空は微かに茜色の痕を残すのみ。この季節の北斗星1号は夜の世界へ向けての出発。星座の名前を冠した列車にとっては最高の季節ではないでしょうか。

 ロイヤルに入った第一印象。それは「年季が入ってるなぁ」というものでした。良く「古い」という表現を「悪い・汚い」と混同する人がいますが、それは間違っています。古いが綺麗に維持されており、20世紀の匂いを感じることのできる空間だなと感じました。各設備も質実剛健、長期使用を考えてしっかりと造りこまれています。シャワーや各種サービスと相まって、二人利用SA1の寝台料金は安いと思います。また、普段は「列車=通勤電車=混んでる〜」という図式が頭にある私にとって、この広い空間を二人占めできる事実に、しばし不思議な感覚に襲われました。
 発車後ほどなくしてウェルカムドリンクのサービスを受けます。「おたるワイン」で乾杯!甘口の白ワインで飲みやすかった。ウィスキーも届けられましたが、ウィスキーを飲む習慣が無い私としては、サイズ的にも記念品として持って帰って飾る方を選びました。嬉しいサービスなのですが、半ば形式化しているとも感じます。複数のアルコールやソフトドリンクから選択できるシステムにしても良いでしょう。
アルコールで刺激されたのか、二人ともおなかが減り、買って来た駅弁を広げて早めの夕食を開始しました。そうこうしているうちに、列車は大宮駅に停車。我がロイヤルの窓前の前が丁度列車待ちの人々の列となっており、女子高生の興味津々な視線に思わず恥かしくなりカーテンを閉めました。
列車の中で浴びたい時にシャワーを何度も浴びられる。これはとても贅沢な事です。夕食後一回、寝る前に一回ゆっくり浴びました。広さも十分だし、湯量も豊富。トイレと洗面器が組み込まれていますが、悪臭が漂って来る事も無く清潔に保たれています。ロイヤル最高!でも、洗面器を出しての使用中等に、揺れの拍子でボタンを押してしまう危険性もあるなと感じました。実際に濡れ鼠になった方はいないのかしら?
ベッドでゴロゴロできるのが寝台列車の醍醐味。HP等でダブルベッド化の方法を見ていたのですが、実物を見ると???車掌さん曰く「慣れている方は自分でやられていますけど、私が来てセッティングしますよ。」結局、セッティングは車掌さんにお願いすることにしました。21時頃、車掌さん登場。ゴロゴロ・シュー・・・と手際よくセッティングされていきました。なるほど、こういう動きをするのね。次回は「慣れている方」になれるな。しばしゴロゴロしながら車窓を流れる光やビデオ(この日はロードオブザリングと最近の時代劇を上映)をボーっと眺めます。

21時過ぎにグランシャリオからパブタイム営業開始のアナウンスがありました。ベッドの件もあり、一番乗りは無理でした。仙台駅発車後、さて行こうかというとき、10号車の廊下で言い争う声が。何だ?と外へ出てみると、70歳位の男性二人が言い争い中。話を聞くと、仙台から乗ったものの、予約した1号車は先頭か最後尾かでもめているとのこと。1号車は最後尾である旨を二人に教えました。すると、「やっぱりそうですよね。うちの兄貴はね、昔から俺の言うこと全然聞かないんですよ。」 なるほど兄弟でしたか。兄弟って何歳になっても兄弟なんだよなーと実感。
そんなこんなでグランシャリオに行ったところ、すでに満席。流石は三連休の初日ですね。じゃあ、席が空くまで最後尾まで探検してみようという事になりました。ロビースペースでは一組のカップルがビデオを鑑賞中。やはり、もう少し広さが欲しいところ。1号にも3号のようなロビーカーが欲しいですね。その後、1号車を目指してズンズン行きます。車両ごとに通路の雰囲気・洗面所の形状が異なっていて面白かったです。そして最後尾に到着。しばし立ち席展望室を堪能します。都会の鉄道と違い、駅以外は暗闇が支配し、ポツポツと街灯の明かりが燈る世界。そして、いくつかの駅や操車場を通過。駅の明かりがレールを照らし、暗闇の中にくっきり浮かび上がります。銀河鉄道が実在すれば、こんな感じなのかな。
しばらく去り行く風景を楽しんでいましたが、巡回していた車掌さんが一号車に戻ってきました。もう車掌室に戻ってくるかな?邪魔するのも悪いから、そろそろ戻ることに。すると、1号車の洗面所付近で10号車から移動してきた先程の老兄弟と再会。今度は指定券を無くしたのか見当たらないらしい。ここは車掌さんにお任せ。彼女は「途中で降ろされちゃうのではないか」と心配顔でしたが、私は「ま、何とかなるっしょ」と能天気。そして再びロビーに行ったところ、今度は人で埋まっていました。しかも煙草の煙がもわ〜ん・・・秒速で脱出しました。これは絶対改善すべきです!喫煙天国の列車なんて今時ありえない!
さて、再びグランシャリオを覘いてみると、丁度席が空いていました。早速着席し、ビールとピザ・ソーセージを注文。車内は全体的に落ち着いていて、赤いキノコのようなテーブルライトも良い雰囲気です。お客さんは、カップル・家族連れ・一人旅の人と様々です。二人利用が中心のカシオペアと違う、開放寝台・二人個室・一人個室が混在する北斗星ならではの光景でしょう。そして、いよいよ乾杯!ピザもソーセージも美味!至福の時でした。最後にアプリコットタルトを注文。これも美味しい。子供の頃、L特急「やまばと」に乗った時に連れて行ってもらった以来の食堂車体験に、しばし感動と興奮でいっぱいでした。

グランシャリオ堪能後は、ロイヤルに戻り部屋の明かりを消して夜の車窓を楽しみます。大きな窓の真下にベッドがあるのがロイヤルの良い所。頭を窓側にしてゴロンと寝たところ、綺麗な星空が広がっていました。北日本の天気は大荒れの予報でしたが、幸運にも予報は外れたようです。しばし窓の外に輝くオリオンを鑑賞。一方、列車は闇夜を警笛で切り裂きつつ北斗星が昇り始めた北の空を目指し鉄路をひた走ります。
さて、上野出発以来のロイヤルの乗り心地ですが、快適そのもの。部屋が車両中心部に位置していることが大きいのでしょうか。「車両が古く揺れる」旨の記事を良く目にしたため、乗り心地は諦めていましたが、嬉しい誤算でした。また、発進停車時のショックも極力抑える配慮が感じられます。過去に「はやぶさ」のソロと「出雲」の開放Bに乗ったことがあるのですが、客車にガタがきてるのか牽引機の性能なのか、はたまた機関士のウデの問題なのかわかりませんが、夜中にしばしば衝撃で起こされることがありました。その点、北斗星はJRの看板列車の一つという自負なのか、なかなか頑張っているなと感じました。(おかげで、函館での機関車付け替えを寝過ごして見れなかったのですが・・・)
午前2時半過ぎにセットした目覚ましが鳴りました。そう、初の青函トンネル通過をこの目で見るためです。通過時間に近づくにつれ、いくつかトンネルの様な場所を通過しました。その度に「おっ!いよいよ青函トンネルか!」と湧き上がっては、すぐに景色が見えてしまい「なーんだ違うのか・・・」とガックリくること数度・・・「実はもう通過しちゃったのかなー?」などと話していたところ、またトンネルに侵入しました。おっ!今度は明らかに音が違います。祝!青函トンネル通過!さて、噂のイルミネーションを待ちます。本当だ!時計台や顔が見える!ってアレレ?もう終わり?結構あっけなく終わってしまいました・・・でも、時計台のイルミネーションの撮影に成功したので、まあ満足。

次に目を覚ましたのは午前6時過ぎでした。窓を見ると、空がようやく白み始めた程度、しかし、踏み切りを通過する度に北斗星の通過を待つクルマのライトが確認できます。町はもう眠りから覚めているようです。6時半にルームサービスの紅茶が届けられました。北海道新聞に目を通しながら紅茶を飲みつつ、雪化粧された夜明けの北海道の景色を楽しみます。至福の時・・・。
紅茶で目を覚ました後は、朝食を採るためグランシャリオへ。朝の光を受けた車内は、昨夜とはまた違った雰囲気を醸し出しています。窓際に生けられた花が朝日を受けて綺麗に輝いています。我々二人は洋食セットを注文。和食の売れ行きを確認してみましたが、速攻売切れるという事は無く、結構遅くまで注文可能のようでした。窓の外は相当寒いのでしょう、窓の下半分は曇っています。しかし、車外の厳しさとは反対に、車内は暖房が十分に利いています。北斗星に守られた快適な旅を改めて実感します。さて、注文した洋食セットがテーブルへ届けられました。味もボリュームも満足!彼女は食べ切れなかったので私が手伝うことに、あぁまた体重が・・・。
朝食を採り終えたのは8時前でした。もう少しでこの快適な列車の旅は終わりを迎えます。北日本大荒れの天気予報に、不謹慎にも到着遅延の希望を抱いていた私でしたが、残念ながら、札幌にはほぼ定刻の到着のようです。より速くが要求される現代にあって、少しでも長く乗っていたいと思わせる北斗星は本当に素晴らしい存在だと思います。

ベッドを収納し身支度を整えると、間もなく札幌到着です。重厚感のあった鍵を車掌さんに返却すると、「もう、部屋の主じゃないんだ」という寂しさを感じます。先程まで晴れ間のあった空が灰色になり、白いものがチラホラと舞い始めました。そして、北斗星1号はほぼ定刻に札幌駅に到着しました。一晩の快適な空間を提供してくれたロイヤルに名残惜しさを感じつつ、ホームへ降ります。寒い!流石は北海道だ。札幌降車時に初めて客室側の窓を見ることができました。ナルホドこうなっていたのか・・・。寝台列車を降りたら自然と釜の方へ足が向くのは乗り物好きの習性。主役は昨夜の赤い流れ星から青いニ連星に代わっていました。札幌でも多くの家族連れが機関車を見にホームの先端へ集合。長編成を安全に終着駅まで導いた機関士さんは皆の羨望の的です。出発まで少し時間があったため、小撮影会に。機関士さんも快く撮影に応じていました。その後、耳をつんざく警笛を鳴らし、列車は小雪が舞う中を車庫へと向かっていきました。ありがとう北斗星。

その後、改札で昨夜の老兄弟を発見!追い出されずに良かった・・・。

おわり



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